恐鳥類とは

英国ホーニマン博物館
⇓ フォルスラコスの復元模型

恐鳥類フォルスラコスの復元模型の画像
File:Phorusrhacos Walking With Beasts.jpg

Author:Ben Sutherland
CC BY 2.0

恐竜のニッチ(生態的地位)

約6600万年前に、恐竜が絶滅したことによって、恐竜のニッチ(陸上の頂点捕食者という生態的地位)が、すっぽりと空いた。

空いたニッチを他の動物が占めるのは自然界の常だが、当時の哺乳類はまだ小さく、ニッチ争奪戦には至らなかった。


そして、鳥類の一部が地上に進出して、絶滅した小型肉食恐竜のような大きさと体形、ニッチを獲得した。

つまり、地上走行性の巨大な肉食の鳥類。その総称が「恐鳥類」であり、系統学的な分類によるものではない。


その恐鳥類を代表するひとつが、上の画像のフォルスラコス。見るからに恐ろしそうな、恐怖の鳥類(Terror birds)だ。

ほかではパラフィソルニス、ティタニス、ブロントルニス、ケレンケン、ガストルニスなどが知られている。

恐鳥類の大きさと体型

前述の「小型肉食恐竜のような大きさと体形…」を、下の画像から検証してみたい。

下の画像は、左から🅚ケレンケン(Kelenken)、🅟フォルスラコス(Phorusrhacos)、🅣ティタニス(Titanis)、🅖ガストルニス(Gastornis)の順になっている。


比較する小型肉食恐竜は、映画ジュラシック·パークの劇中に登場するヴェロキラプトルに限定している。

市販されているスケールフィギュアから逆算すると、頭頂高(地面から頭頂までの高さ)180cmぐらいになるようだ。


下の画像のマス目の1辺を30cmだとすれば、ヒトの身長は175cmぐらいになり、映画ジュラシック·パークでのヴェロキラプトルの頭頂高に、ほぼ相当する。

恐鳥類の大きさを比較

🅚ケレンケン、🅟フォルスラコス、🅣ティタニス、🅖ガストルニス。すべてが2mを越えている。


画像に、劇中のヴェロキラプトルを加えても、最後尾の🅖ガストルニスよりも1マスほど低くなる。

やはり、恐鳥類は小型肉食恐竜のような大きさ。いや、それ以上の大きさだ。


特に、🅚ケレンケンは小型肉食恐竜の枠を越えた大きさであり、中型肉食恐竜の範ちゅうに入るのだろう。また、シルエット(体型)も肉食恐竜にしか見えない。

🅟フォルスラコス、🅣ティタニス、🅖ガストルニスのシルエットは恐竜のようでもあり、鳥類のようでもある。まさしく恐鳥類だ。

以降は、恐鳥類の代名詞的存在である🅖ガストルニス、🅟フォルスラコスについて書いてみたい。

Gastornis ガストルニス

⇓ ガストルニスの復元模型

ガストルニスの復元模型の画像
Gastornis

Photo by Markus Wollny
Some rights reserved

恐鳥類には系統学的な分類はないものの、ガストルニス類とフォルスラコス類に、ほぼ大別できるとする考え方もある。

先ほどの画像(「恐鳥類の大きさを比較」の画像)の順に、大別すると…。

🅚ケレンケン、🅟フォルスラコス、🅣ティタニスは、フォルスラコス類になる。


一方、🅖ガストルニスと、画像にはないディアトリマは、ガストルニス類であったが…。

ガストルニスとディアトリマ

正直なところ、管理人のような昭和の小学生世代にとっては、ガストルニス類とするよりも、ディアトリマ類にしてほしいほど、ディアトリマは馴染み深い。

ディアトリマの簡単な模型を、菓子類の「おまけ」にしていたメーカーもあったという単純な理由からになるが…。


いつの間にか、ディアトリマという言葉を聞かなくなっていた。

その理由は、大人になってから知ったのだが、ディアトリマという学名には、無効名の可能性があるということだった。


恐竜絶滅後の約6600万年前当時。ヨーロッパ(ユーラシア大陸)の恐鳥類がガストルニスで、北アメリカ大陸の恐鳥類がディアトリマだと考えられていた。

現在では、ベーリング海峡によって隔てられている両大陸なのだから、自然な発想だったと思う。


だが、約6600万年前当時の両大陸は陸続きで、ガストルニスとディアトリマは同一だとする提唱が強まったことから、学名ディアトリマの使用は消極的になっている。

ただ、ローラシア大陸の分裂によって、ユーラシア大陸と北アメリカ大陸が完全に分離したのは、約8000万年前 - 7000万年前だとされている。


ガストルニスの生息年代:約6600万年前 - 3390万年前から考えると、時間のズレは感じるものの、当時のベーリング海峡は、ギリギリ横断可能だったのかもしれない。

あるいは、地震やプレートの沈みこみなどによる海底の隆起によって、横断可能な時期があったのかもしれない。

ガストルニス

分類:ガストルニス目ガストルニス科ガストルニス属
生息年代:約6600万年前 - 3390万年前

化石産出地:ヨーロッパ、アジア、北米
食性:草食 OR 肉食
頭頂高:約2m


上の画像がガストルニス。体重200kg以上で、最大個体では、体重500kgにも達しただろうと推定されている。

足も太くて、見るからに強靭そうだ。その足で獲物を蹴り飛ばして、鷲づかみにしたら、クチバシでつかんで獲物が動けなくなるまで地面に叩きつける狩りをしていたそうだが…。


改めて、ガストルニスの画像を見ると、獲物をつかむような鋭い爪や、クチバシではなく、捕食者(肉食動物)ではなかった可能性さえもある。

また、2013年のカルシウム同位体比測定によると、ガストルニスの値は、草食恐竜や草食哺乳類の値に近かった。


上記より、ガストルニスは草食性の恐鳥類であったとする見解にはなるが、断定までには至っていない。

フォルスラコスと同目別科の 現生鳥類

フォルスラコスと同目別科
⇓ アカノガンモドキ

アカノガンモドキの画像
Red Legged Seriema Call

Photo by Mark Dumont
Some rights reserved

恐鳥類はすべて絶滅しているが、恐鳥フォルスラコスと同目別科の鳥類、ノガンモドキが南米に現存している。


画像(「アカノガンモドキ」の画像)を見ると、冒頭の画像(「フォルスラコスの復元模型」の画像)と、似ているようにも思える。

似ているとなると、現生鳥類のノガンモドキを知ることが、恐鳥類のフォルスラコスを知ることにつながるのだと思う。

ノガンモドキ

分類:ノガンモドキ目ノガンモドキ科
      アカノガンモドキ属  および
      クロアシノガンモドキ属
分布域:南米(ブラジル、ボリビアなど)の草原や森林

生態:主に地上性
食性:主に肉食
頭頂高:約90cm
走る速度:時速60km


上記のとおり、ノガンモドキ科は、アカノガンモドキとクロアシノガンモドキの2属2種によって構成されており、後述するフォルスラコスと同じノガンモドキ目に分類される。

つまり、絶滅した恐鳥類フォルスラコスと、現生鳥類のノガンモドキは、同目別科に分類される鳥類になる。

ノガンモドキの生態

主に地上性ではあるが、短い距離なら飛行できるので、跳躍と羽ばたきだけで上がれるような、1m - 5mの低い樹上に営巣する。


ノガンモドキの食性

主としてヘビやトカゲ、カエル、小型哺乳類などを捕食する肉食性ではあるが、トウモロコシや豆類などを採食する植物食性でもある。


ノガンモドキの狩り

改めて、上の画像(「アカノガンモドキ」の画像)を見ると、猛禽類のハヤブサやミサゴのようなカギ状のクチバシをもっている。

そのクチバシで獲物を攻撃して、地面に叩きつける。そして、獲物が大きすぎるときには、鋭いクチバシで切りわける。


上のように書くと、まるで恐鳥類の狩りのような凄惨さだが、獲物を地面に叩きつけるのは、骨を砕いて飲み込みやすくするためのようだ。獲物を切りわけるのも同様だ。

恐鳥類フォルスラコスと同目に分類されているだけに、現生鳥類ノガンモドキに、恐鳥類の一端を見たような思いがした。

Phorusrhacos フォルスラコス

⇓ フォルスラコス

フォルスラコスの復元画像
The Phorusrhacos Pool

Photo by Futurilla
Some rights reserved

フォルスラコス科には、5亜科14属18種もの恐鳥類が分類されている。

「恐鳥類の大きさを比較」の画像の🅚ケレンケン、🅟フォルスラコス、🅣ティタニスの3属3種も、フォルスラコス科に分類される。


その模式属になるのがフォルスラコス属であり、模式種となるのが、画像のフォルスラコス·ロンギシムスになる。

先の3属3種を年代順に並べ替えると、🅟フォルスラコス、🅚ケレンケン、🅣ティタニスの順になる。


下記、フォルスラコスの生息年代:約6200万年前 - 180万年前は、フォルスラコス科に分類される恐鳥類全体の生息年代になるが…。

最後の恐鳥類ティタニスの生息年代は約490万年前 - 180万年前ではなく、約490万年前 - 1万5000年前だとする提唱もある。


その場合のフォルスラコス科全体の生息年代は、約6200万年前 - 1万5000年前になる。

そのティタニスが、約300万年のアメリカ大陸間大交差(詳細は当サイト「パナマ地峡」)で、南米から北米への拡散を果たした恐鳥類になる。

Phorusrhacos フォルスラコス

分類:ノガンモドキ目フォルスラコス科フォルスラコス属
生息年代:約6200万年前 - 180万年前

化石産出地:南アメリカ
食性:肉食 or 腐肉食
頭頂高:約m
体重:約130kg

上の画像がフォルスラコスになるが、現生鳥類のノガンモドキと同目別科だけあって、やはり似ているように思う。


フォルスラコスの狩り

狩りの方法は、ほぼノガンモドキと同じだが、超大型の鳥類だけに、よりパワーアップされた攻撃力を備えている。

①斧を振り下ろすように、重い頭部を振り下ろして、鋭いクチバシで獲物を突き刺す。

②鋭い爪をもつ足で獲物を蹴り飛ばす。あるいは、体重を乗せて踏みつけるか、爪を突き刺す。


突き刺すという表現にはなったが、下の動画を見る限りでは、貫通させるイメージに近い。

そうして、獲物に大きなダメージを与えたら、鋭いクチバシで獲物を地面に叩きつけたり、切りわけたりする。

恐ろしい鳥だ。まさしく恐鳥類、Terror birdsだ。

動画 フォルスラコスの狩り

Walking with Beasts - Phorusrhacos (All Scenes)
Uploaded by Goji98

2025年1月1日 不思議なサイト管理人


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