サーベルタイガーとは
⇓ ダイアウルフ
File:Smilodon and Canis dirus.jpg
Author:Robert Bruce Horsfall
Public domain
広義でのサーベルタイガー
マカイロドゥス亜科(絶滅亜科)に分類されるネコ科動物の総称として、「サーベルタイガー」と呼ぶ。
マカイロドゥス亜科は「メタイルルス族」「スミロドン族」「ホモテリウム族」「マカイロドゥス族」の4族に分類され、その下位には70種以上が分類されている。
上記のとおりなのだが、広義すぎて続きの書きようがない。
実際に、沖縄県·西表島のイリオモテヤマネコが、1965年に発見された際には、前述の「(サーベルタイガー)メタイルルス族と近縁ではないか?」と、話題になったそうだ。
現在では、遺伝子解析によって、ベンガルヤマネコの亜種として分類されているが…。
発見時には誇張されて、「サーベルタイガーの生き残りを西表島で発見!」というような見出しのスポーツ紙もあったのかなと、想像したりする。
狭義でのサーベルタイガー
一般的には、冒頭の画像「スミロドン·ファタリスとダイアウルフ」が、サーベルタイガーを代表する画像のひとつになるのではないだろうか。
スミロドン·ファタリスはスミロドン族に分類されるが、そのスミロドン族は3属に分類される。
3属とは、パラマカイロドゥス属、メガンテレオン属、スミロドン属になり、スミロドン·ファタリスは、文字どおりスミロドン属に分類される。
そのスミロドン属には、スミロドン·グラシリス、画像のスミロドン·ファタリス、スミロドン·ポピュレーターの3種が分類される。
つまり、狭義でのサーベルタイガーとは、スミロドン属に分類される3種の総称となる。
さらに、管理人の私見を強く入れれば…。
狭義でのサーベルタイガーとは、スミロドン族のスミロドン属に分類される3種のうちの2種、スミロドン·ファタリスとスミロドン·ポピュレーターのことだと思っている。
スミロドン族 スミロドン属3種
File:Smilodon Populator1.JPG
Author:Tiberio
Public domain
スミロドン属3種の分類
下の画像が、スミロドン属3種の分類になる。
右から🅖スミロドン·グラシリス、🅕スミロドン·ファタリス、🅟スミロドン·ポピュレーターとなり、進化の順でもある。
上の画像を現生動物に例えると、🅖スミロドン·グラシリスはジャガーと同じぐらいで、🅕スミロドン·ファタリスはライオンと同等以上。
🅟スミロドン·ポピュレーターともなると、ライオンよりも圧倒的に大きい。
🅖スミロドン·グラシリス
学名:Smilodon gracilis
生息年代:約250万年前 - 50万年前
体重:55kg - 100kg
犬歯の長さ:後述の2種よりも細かった
分布域:北アメリカ - 南アメリカ北部
スミロドン属では最小種であり、最古の種。そのため、解剖学的構造の詳細はほとんど不明だが、スミロドン·グラシリスを起源として、下記の2種に進化したと考えられている。
当サイト「パナマ地峡」の中でも書いているが、スミロドン·グラシリスは、アメリカ大陸間大交差(動物大移動)によって、北アメリカ大陸から南アメリカ大陸へと移動している。
🅕スミロドン·ファタリス
学名:Smilodon fatalis
生息年代:約160万年前 - 1万年前
体重:160kg - 280kg
犬歯の長さ:最大約18cm
分布域:北アメリカ - 南アメリカ西部
研究者によっては、スミロドン·ファタリスのほかに、スミロドン·カリフォルニクスと、スミロドン·フロリダヌスを加えた3種とする分類もある。
そのため、冒頭のスミロドン·ファタリスの画像の説明にも「Smilodon californicus」と書かれているが…。
それらは亜種だと考え、「スミロドン属3種の分類」の画像のように、🅕スミロドン·ファタリス1種とする場合が多い。
🅟スミロドン·ポピュレーター
学名:Smilodon populator
生息年代:約100万年前 - 1万年前
体重:220kg - 436kg
犬歯の長さ:約24cm
分布域:南アメリカ
ときどき、「サーベルタイガーの牙の長さは24cm」というような文字をWebサイトで見かけるが、広義でのサーベルタイガー全種の犬歯が24cmもあるわけではないし、10cm前後の種も多い。
また、狭義でのサーベルタイガー、スミロドン属3種においても、前述のとおり、スミロドン·ポピュレーターだけが、24cmにも達する長大な犬歯をもつ。
「スミロドン·ポピュレーター」の画像のとおり、長大な犬歯だ。また、「ライオンよりも圧倒的に大きい」という言葉どおりの大きさ、戦慄の巨大さだ。
つまり、多くの人がイメージするサーベルタイガーとは、冒頭の画像のスミロドン·ファタリスか、24cmの長大な犬歯をもつスミロドン·ポピュレーターのどちらかになるとは思うが…。
実際には、サーベルタイガー(剣歯虎または剣歯猫)と呼ばれるほど、トラやネコに近い系統類縁関係ではなかった。
トラはヒョウ属、ネコはネコ属、スミロドンはスミロドン属になるので、同じネコ科に分類されていたこと以外の共通項は見つからない。
スミロドンの キバ(犬歯)
ライオンの犬歯
撮影者:不思議なサイト
(スタッフ FUKUさん)
撮影場所:京都市動物園
撮影日時:2015年
犬歯を突き刺していた
以前は、ライオンやトラのように、獲物の喉などに噛みついて突き刺すと考えられていたが、現在では否定傾向にある。
ライオンの犬歯の長さは平均で6cmだが、スミロドン·ポピュレーターの犬歯の長さは24cm。4倍にもなる。
あるいは、スミロドン·ファタリスであっても犬歯の長さは18cm。3倍にもなる。
「ライオンの犬歯」の画像の、犬歯の長さだけを3〜4倍にした姿を想像してみてほしい。恐ろしさが増すと同時に、「すぐに折れそう…」な感じも増してくる。
獲物の喉に犬歯を突き刺しているときに、激しく動かれたら折れてしまう。
犬歯が折れてしまったら致命傷だ。サーベルないタイガーになってしまう。
犬歯で切り裂いていた
上記のような理由から、代わって台頭してきたのが、長大な犬歯で獲物の喉や腹を切り裂いて、弱るのを待つ形式の狩りをしていたのではないかとする提唱だ。
あるいは、スミロドンはスカベンジャー(腐肉食動物)でもあり、長大な犬歯で腐肉を切りわけていたのではないかとする提唱もある。
確かに、犬歯を突き刺すよりはリスクも減るし、切り裂くために使われていたとするほうが、自然なようには思える。
スミロドンの生活と 絶滅理由
File:LA BREA TAR PITS, LOS ANGELES.jpg
Author:KLOTZ
CC BY-SA 3.0
ラ·ブレア·タールピット
冒頭の「スミロドン·ファタリス」の画像の説明を読めば、場所はラ·ブレア·タールピット(La Brea Tar Pits)になっている。
タールピット。あまりなじみのない言葉だが、天然アスファルトの池のことであり、もっと言えば、天然アスファルトの底なし沼のようなものになる。
上の画像は、ラ·ブレア·タールピットに沈んでいくマンモスの想像模型になるが、その後は、長い年月をかけて化石となる。
スミロドン·ファタリスの生活
実際に、スミロドン·ファタリスの化石も、おおよそ3000頭以上が発掘されており、化石からスミロドン·ファタリスが、どんな生活をしていたのかを知ることもできる。
犬歯が折れている個体もいた
やはり、スミロドン·ファタリスの犬歯は長大すぎて、犬歯が折れた個体も多く発掘されている。
さらには、足の骨折や、脊髄損傷などを負った個体までもが発掘されている。
野生動物がケガをすれば、狩りの成功率が極端に下がる。
あるいは、狩りにも行けない状態となり、それらは死が迫っていることを意味する。
集団生活をしていた?
ところが、前述のようなケガを負いがらも、その後治癒して、長らく生き延びたであろう個体が多くいたと検証されている。
そのことから、エサを分け与える仲間がいたのではないかと推測される。
また、長大な犬歯に成長するまでには、3年以上を要したとする見解から、仲間の見守りというセーフティネットが必要だったのではないかとも推測されている。
つまり、スミロドン·ファタリスは集団生活をしていたのではないかという提唱になる。
集団生活懐疑派は?
ただ、研究者のすべてが、スミロドン·ファタリスの「損傷した個体」や「集団生活」を肯定しているわけではなく、懐疑的にみる研究者もいる。
損傷についての一例をあげると、「タールピットの中で、化石になるまでの何千年という間に、タールの動きによって損傷したことが考えられる」というような考察であり、説得力もある。
だが、ラ·ブレア·タールピットには、100以上ものタールピットがあるとはいえ、米国カリフォルニア州ロサンゼルス市内の限られた地域にすぎない。
そこから、おおよそ3000頭以上ものスミロドン·ファタリスの化石が発掘されているということを、鳥瞰的(ちょうかんてき)に見れば、言わば一箇所集中。
まだ発掘されていない化石や、化石にならなかった個体を含めれば、その数は想像もつかない多さになる。
もしも、スミロドン·ファタリスが集団生活をしていなかったとしたら…。
「縄張りを最重要視する単体の肉食動物が、一箇所集中で集まったりするのかな?」と疑問には思う。
つまり、管理人は否定派への懐疑派。スミロドン·ファタリスが集団生活をしていたと考える肯定派だ。
スミロドンの絶滅理由
改めて、スミロドン·ポピュレーターの画像を見てみると、筋骨隆々だ。
特に、上半身の大きさがすごい。その前足で獲物を押さえつけながら、長大な犬歯で喉や腹を切り裂いていたのだろう。
逆に下半身は、上半身に比べると、少し弱々しさを感じる。
その印象どおりで、現生動物のトラやライオンのような敏捷性には欠けていたようだ。
そのため、約1万2000年前から1万年前に、獲物としていたマンモスや、メガテリウムなどの大型草食動物が絶滅すると…。
スピーディーな小型の獲物を捕食することができなかったことが、スミロドン絶滅につながったと考えられている。
2025年1月1日 不思議なサイト管理人
参考書籍 · 参考サイト
Saber-toothed cats were fierce and family-orientedマカイロドゥス亜科 - Wikipedia
Smilodon - Wikipedia