ラクダの起源は 北アメリカ大陸
⇓ プロティロプス
Protylopus petersoni by WillemSvdMerwe on DeviantArt
by:WillemSvdMerwe
ラクダの起源
ラクダと問われれば、まず砂漠。次に、中東(アラビア半島)やアフリカなどをイメージする人が多いと思う。
確かに、ラクダには暑い国、乾燥地帯の動物というイメージをもつが、そこには「現在のラクダは」という注釈があったほうが、より正確になるのかもしれない。なぜなら…。
ラクダの祖先はウサギぐらいの大きさで、約4500万年前の北アメリカに出現している。また、北極圏からもラクダの化石が発掘されている。
ラクダの起源は北アメリカ
前述の「ラクダの祖先はウサギぐらいの大きさで…」という言葉は、ときどき見聞きする言葉だ。
ただ、学名などの詳細はわからないが…。
当サイト「ベーリング陸橋」の中では、「ユーラシア大陸における最古のラクダの記録は、700万年前-600万年前の化石(スペイン·ベンタデルモロ)である」としている。
上記2つから、「ラクダの起源は北アメリカ大陸で、ユーラシア大陸へは、当時は横断可能であっただろうベーリング海峡を経て、拡散していった」と推測できる。
ラクダの祖先の詳細は不明だが、ほぼ同時期のラクダということなら、冒頭の画像がクローズアップされる。
プロティロプス
Protylopus petersoni
プロティロプス ピーターソン
生息年代:約4500万年前 - 4000万年前
分布域:北アメリカの森林
現生のラクダの脚の指は2本だが、プロティロプスには4本の指があった。
また、体長·体重に関してはウサギやネコ、イヌぐらいなどの複数の見解があるが、いずれにしても小動物だった。
ラクダの系統樹
⇓ ポエブロテリウム
File:Poebrotherium.jpg
Author:Robert Bruce Horsfall
Public domain
最古のラクダの詳細は不明
下の画像の説明には、「プロティロプス属から始まるラクダの架空の系統樹」と書かれている。
最古のラクダの詳細は不明なようで、属名があるべき位置には、「?(疑問符)」が置かれている。
やはり、冒頭の画像のプロティロプスは最古のラクダとするよりも、最古級のラクダとしたほうが適切なようだ。
ラクダの仮説系統樹
当サイトも、冒頭の画像がプロティロプスで、次の画像をポエブロテリウムとしており、最初の2属は下図と同じ順になっている。
「架空の系統樹」では、空想上の動物の系統樹だと勘違いされそうだし、最古のラクダの詳細が不明なので、下図のタイトルは「ラクダの仮説系統樹」としている。
ラクダの仮説系統樹
ポエブロテリウム
Poebrotherium labratum
ポエブロテリウム ラビアツム
生息年代:約3800万年前 - 3080万年前
分布域:北アメリカの森林
前述のプロティロプスの脚の指は4本だったが、ポエブロテリウムでは2本になっていた。
また、体高こそヤギぐらい(約90cm)しかなかったものの、「ヤギぐらいの大きさのラクダ」の画像のように、体型は現生のラクダに近づいていた。
それなら、ポエブロテリウムが現生のラクダの祖先なのかと問われれば…。
ラクダの仮説系統樹でいうと、プロカメルス(Procamelus)が直接の祖先、または祖先と近縁だとする傾向にあるようだ。
最大のラクダ ティタノティロプス
File:Titanotylopus nebraskensis skeleton.jpg
Author:Dawn Pedersen
CC BY 2.0
肩高3.5mの巨大ラクダ
「ティタノティロプスの骨格模型」の画像は、米国·ロサンゼルス自然史博物館で撮影されたものだが…。
博物館の天井に頭がつきそうなほどに巨大だ。「本当にラクダなのか?」「恐竜じゃないのか?」と疑ってしまうほどだ。
ページ冒頭からの2属(プロティロプス属とポエブロテリウム属)のような可愛さは、微塵も感じられない。
それもそのはずで、ラクダは中新世(2400万年前-510万年前)から、鮮新世(510万年前-170万年前)にかけて大型化していく。
後述する「北極圏のラクダ」も大型のラクダだった。
特に、ティタノティロプスは「史上最大のラクダ」と呼ばれるほどに巨大で、肩高3.5m。この数字は、現生動物のアジアゾウよりも大きく、アフリカゾウに迫る巨大さだ。
ティタノティロプス
生息年代:約1030万年前 - 3万年前
分布域:北アメリカの草原
下の画像は、左からティタノティロプス、カメロプス·ヘステルヌス、ヒトコブラクダの順で、ティタノティロプスは肩高3.35m(11フィート)での復元図になっている。
肩高3.35mのティタノティロプス

ティタノティロプスと人を比べてみると、「こんなにもデカいのか」と仰天する巨大さだ。頭の高さまでは5m前後だろうか。
2階のベランダに立っていても、目が合いそうな気がして怖い。
ティタノティロプスは、足も首も長いキリン型のラクダで、文字どおり、キリンのような樹葉採食者として草原に分布していた。
北極圏のラクダ
File:Arctic Region
Public domain
日本語:不思議なサイト管理人
カナダ·エルズミア島
2006年夏。古生物学者のナタリア·リプチンスキー氏が、新たなラクダの化石を、カナダ·エルズミア島の発掘現場ファイルズリーフベッドで発見した。
一般的には、「カナダ? オーロラの見える亜寒帯の国だな」という印象になるかと思うが…。
エルズミア島を調べてみて驚いた。「北極圏。しかも北極点に近い島じゃないか」
地図画像のとおり、北極点に近い。気候は亜寒帯ではなく、寒帯だ。北極諸島のひとつで、世界最北端の有人島になるらしい。
北極点、北極諸島…。名前を聞くだけで寒くなるような地域だが、新たなラクダの化石が発掘されたのは、その地域のひとつのカナダ·エルズミア島だ。
350万年前の大型ラクダ
2006年以降、ナタリア·リプチンスキー氏は幾度となくエルズミア島を訪れ、化石をコラーゲン鑑定に依頼した結果、350万年前のラクダだということが判明した。
350万年前といえば、現在の新生代後期氷河時代(詳細は当サイト「現在は氷河時代」)ではないとはいえ、南極大陸の氷床は増えつつある時代だ。
350万年前当時の気候は、現在よりも2 - 3度高く、発掘現場ファイルズリーフベッド周辺は森林だったと考えられている。
また、北極圏のラクダは肩高2.7m、体重1t。現生のヒトコブラクダや、フタコブラクダなどよりも、3割ほど大きいラクダだったと推定されている。
ラクダは北アメリカから拡散
北極圏のラクダの発表時、北アメリカ大陸起源のラクダが、他大陸へ拡散したことにも触れられており、そのときに使用されたのが下の画像になる。

動画からのスクリーンショット
上の画像のとおり、ラクダは北アメリカ大陸からベーリング海を超えて、ユーラシア大陸やアフリカ大陸へと拡散。フタコブラクダやヒトコブラクダに進化している。
一方、パナマ地峡(詳細は当サイト「パナマ地峡」)を超えて、南アメリカ大陸へ拡散したラクダは、ラマやアルパカなどに進化している。
なお、起源地であるアメリカ大陸のラクダは、約1万2000年前 - 1万年前に絶滅している。
人とラクダ
File:Fresh time.jpg
Author:Mohamed Hozyen
CC BY-SA 4.0
旧世界のラクダ
画像(紅海を泳ぐ少年とラクダの画像)の説明を見ると、場所は紅海に面したエジプト·ダハブになっている。
ダハブは遠浅の海が有名なので、ほとんどが水中歩行になるのだろうが、ラクダの肩高から推測すると水深2mぐらいだろうか。
少年の顔が緊張しているようにも見えると同時に、人とラクダのつながりを覚える1枚でもある。
また、旧世界(ヨーロッパ·アジア·アフリカ)のフタコブラクダとヒトコブラクダは、どちらも「砂漠の舟」と呼ばれるほどに、人との関係は密接だ。
たとえば、砂漠を進むキャラバン隊。人と荷物を乗せて、砂漠を横断できる動物というと、ラクダしか思い浮かばない。
そのほか、観光·使役·牧畜·搾乳…。人とラクダは共に生きている。
南アメリカのラクダ
家畜種のアルパカとラマ。どちらも牧畜されている。
主な用途としては、アルパカの毛は繊維素材として利用され、ラマは使役や運搬に利用されており、やはり人と共に生きている。
野生種のビクーニャとグアナコは、どちらも生息数が激減している。
野生種を密漁から守り、見守り、絶滅に至らせないようにすることが、人とラクダの共存だと思う。
2025年1月1日 不思議なサイト管理人
参考書籍 · 参考サイト
TED動画厳選 Latif Nasser /「あなたの知らない、ラクダの本当の故郷」」|Doctor's Gateキャメル Camel: 最新の百科事典、ニュース、レビュー、研究
巨大なラクダが北極圏を350万年前に歩き回った - 2023 | 動物
哺乳類の分類
ラクダと石 — 地質ニュース603号(PDF)
Poebrotherium — Циклопедия
Titanotylopus - Mindat.org