海峡と ベーリング陸橋
File:Beringlandbrug - ontgletsjeringsperiode-nl.png
Public domain
日本語:不思議なサイト管理人
現在の ベーリング海峡
画像のように、現在のロシア(ユーラシア大陸)と米国アラスカ州(北アメリカ大陸)は、ベーリング海峡(赤線の矢印)によって隔てられている。
北はチュクチ海(北極海の一部)、南はベーリング海とつながる長さ96kmほどの海域だが…。
大陸間の最狭部は86kmほどしかなく、深さも30〜50mほどしかない。
名称の由来は、1728年に海峡を通過したV.ベーリングが、2つの大陸を隔てる海峡であることを発見したことによる。
ベーリング陸橋の 出現
現在は新生代後期氷河時代の中の間氷期で、直近の氷期はビュルム氷期(約7万年前-1万年前)となる。
寒さのピークとなる約2万3000年前には、現在よりも7℃ほど気温が下がり、海退によって海面は120mほども低くなった。
» 参考:当サイト「現在は氷河時代」
前述のように、現在のベーリング海峡は深さ30〜50mほどだが、そこから海面が120mほども下がれば、海底は海面よりも90〜70mほども高くなる。ベーリング陸橋の出現だ。
書籍やWebサイトによっては、ベーリンジア(Beringia)やベーリング地峡とも書かれているが、どれでも同じで、すべてベーリング陸橋のことを指している。
アフリカ単一起源説との 関係
File:Beringiya.jpg
Author:Erdall
CC BY-SA 3.0 DEED
ベーリング陸橋の 時期
ベーリング陸橋は元·海底ということや、ビュルム氷期という寒々とした言葉から、殺風景で暗い印象になりがちだが…。
実際には、明るい緑の冷涼ステップ(主に乾燥性の草原)が広がっていたようだ。
また、ビュルム氷期約6万年の間、常にベーリング陸橋を出現させるほど海面が低かったわけではない。
出現していた時期は、下記の2回だと考えられている。
① 約5万年前-3万5000年前
② 約2万5000年前-1万年前
北米への人類到達
アフリカ単一起源説による、現生人類(ホモ·サピエンス)の出アフリカの時期は、約6万年前だと考えられている。
出アフリカからベーリング陸橋を通過して、北米に到達するまでには、どれほどの時間を要したのだろうか?
1回目は不可能
上記「ベーリング陸橋の出現時期」から逆算すると、「① 約5万年前-3万5000年前」の期間は不可能だったと考えられる。
当然ながら地図もなく、どこに向かって歩いているのかもわからないまま、居住の試行錯誤を繰り返す行程だ。
1回目のベーリング陸橋出現期間に、たどり着くのは不可能だったであろう。
2回目で到達
では、「② 約2万5000年前-1万年前」の期間はどうだろうか?
約6万年前の出アフリカから、約3万5000年後-5万年後までに、ベーリング陸橋を通過すればいい。可能な期間だ。
最近の学説では、北米への人類到達の時期を、約2万3000年前から2万1000年前とする傾向にあり、2回目のベーリング陸橋出現時(約2万5000年前-1万年前)と一致する。
しかも、「約2万3000年前」といえば海退のピーク、ベーリング陸橋の拡大ピーク時だ。
人類にとって、ベーリング陸橋は新天地への架け橋であると同時に、希望の架け橋でもあったのだと思う。
他の氷期の ベーリング陸橋
ここまでは、ビュルム氷期内でのベーリング陸橋について書いたが、他の氷期ではどうだったのだろうか。
他の氷期でも、ベーリング陸橋は出現していたのだろうか。
それを知るためには、現在の新生代後期氷河時代の中の、6つの氷期の時期が必要になるかと思うので…。
ページ最下段の参考サイトを、文字どおり参考にして、氷期一覧表を作成してみた。
氷期一覧表
現在の新生代後期氷河時代約260万年間を、現在から遡って列記すると、ビュルム氷期·リス氷期·ミンデル氷期·ギュンツ氷期·ドナウ氷期·ビーバー氷期の6つになる。

作成:不思議なサイト管理人
ビュルム氷期以外の氷期にも、気温の低下による海退からのベーリング陸橋の出現や、半出現の可能性はあっただろうし、そう書いてある書籍やWebサイトもある。
ただ、その場合には「当時、シベリアとアラスカは陸続きになっていた」とか、「横断可能であった」とかいうような表現が多いようだ。
プレートの沈みこみによる反動からの跳ね上がりや、地震による海底の隆起などから浅海化して横断可能だったのかもしれない。
» 参考:当サイト「パナマ地峡」
動物たちの ベーリング陸橋
File:Woolly mammoth (Mammuthus primigenius) - Mauricio Antón.jpg
Author:Mauricio Antón
CC BY 2.5 DEED
ケナガマンモス
画像はケナガマンモス(別名:ウーリーマンモス)だが、約70万年前に、シベリアから北アメリカへ渡ったと考えられている。
70万年前といえば、ギュンツ氷期(80万年前 - 42万3000年前)。その期間中には、陸続きになっていた時期があったのだろう。
そして、北アメリカへ渡ったケナガマンモスの中の一群には、約30万年前に、再びシベリアへ戻る移動があったとされている。
30万年前といえば、ミンデル氷期(30万3000年前 - 24万5000年前)だが、海面が100mほど下がる時期があったと考えられているので、やはり陸続きになっていた時期があったのだろう。
他ではライオンやヒグマ、オオカミなどがベーリング陸橋を渡って、シベリアから北アメリカへ移動している。
逆に、北アメリカからシベリアへ移動した動物の代表としては、意外にもラクダの名があげられる。
ラクダ
サウジアラビアの国獣でもあるラクダ。ラクダといえば、中東·アラビア半島の砂漠を思い浮かべる人も多いと思うが…。
実際には、ラクダの起源は北アメリカ大陸であり、ユーラシア大陸には生息していなかった。
» 参考:当サイト「ラクダの進化」
ユーラシア大陸における最古のラクダの記録は、700万年前-600万年前の化石(スペイン·ベンタデルモロ)になる。
そのことから、北アメリカ大陸からユーラシア大陸へ移動したのは、800万年前ぐらいだと考えられている。
800万年前といえば、中新世(約2300万年前-500万年前)。全般的には、現在よりも気温が高く、海面も20m以上は髙かっただろうと考えられている。
それだと、「800万年前。気温の低下による海退から、ベーリング陸橋が出現した」とは考え難いが…。
気温の変動だけが、海進や海退の原因になるのではない。長期的な海洋の形の変化や、海底の深さの変化などによっても、海進や海退は起こる。
あるいは、地震による海底の隆起も考えられる。800万年前ぐらいの一時期には、ベーリング海峡は横断可能であったのだろう。
それに、下の画像のようにラクダも泳げる。
クジラとラクダの祖先は同じなのだから(クジラの分類は鯨偶蹄目鯨類、ラクダの分類は鯨偶蹄目ラクダ科)。

上の画像は、確かにネッシー(その正体のひとつに、中生代のプレシオサウルスの生き残り説があげられている)のような水生爬虫類にも見える。
泳ぐラクダや川を泳ぐサメ、海を687kmも泳ぐホッキョクグマなど、現生動物の意外すぎる姿を、絶滅動物の生き残りや、UMA未確認生物と誤認する例は、少なくないように思える。
2025年1月1日 不思議なサイト管理人
参考書籍 · 参考サイト
till 氷成堆積物現生人類単一起源説と言語の系統について - 千葉大学文学部(PDF)
ラクダの生体貿易(PDF)
最終氷期から現在へ - 第42回特別展大化石展
ホッキョクグマ、687キロを泳ぐ | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト
人類は2万年以上前に北米到達、従来説覆す足跡を発見=米研究チーム